福間洸太朗さんのN.Y.デビュー10周年記念リサイタル
ちょっと前になりますが、12月4日にピアニスト福間洸太朗さんのN.Y.デビュー10周年記念リサイタルに行ってきました。
ここ数年で最も感動を与えてくれるピアニストです
彼の演奏はとても多彩で、明るい光と温度、潤いをもった素晴らしい音色なんです。
「ピアノでここまで表現できるんだ!」と驚き、
演奏の魅力に引きずり込まれ、
彼の持つ知的で誠実な音楽の世界に漂って癒されます。
「五輪書を読みて」と題されたプログラムは、とてもメッセージ性のあるものでした。
クリーヴランド国際コンクールのときに読んで、精神のあり方など、多くの影響を受けたそうです。
「五輪書」にある五大(地・水・火・風・空)を表現したプログラム構成で
福間さんの音楽への姿勢がこの中に現れているなあと思って聴いてました。
「五大(地・水・火・風・空)って紅天女だわ」と思ってしまったのはご愛嬌ってことで。
第1曲 笛と太鼓
第2曲 夜の音楽
第3曲 狩
水: クロード・ドビュッシー 沈める寺(前奏曲集第1集 第10番)
風: フレデリック・ショパン バラード第4番 へ短調 Op.52
アンコール
J・S・バッハ 主よ人の望みの喜びよ
E・サティ ジュ・トゥ・ヴ(福間洸太朗編曲)
前半戦は黒のシャツに黒スーツで胸元に赤いチーフ姿の福間さんが
演奏が進むとジャケットを脱いでくれて、もお本当にかっこいいんですよ!
ピアニストの背中ってなんて強く美しくあるのでしょう。
ここから音が紡ぎだされていると思うと目が離せませんね。
(そういう理由もあって左手側に席をとりました)
水のドビュッシーは私の大好きな作曲家で、
初めて福間さんの演奏を聴いたときから「この人のドビュッシーを聴きたい」と思っていたので
念願かなって本当にうれしかったです。
期待以上にフランスの重い空気感のある沈める寺、沈んでいるんだけど水は流れてきらめき波紋は揺らめいているとても幻想的な演奏で、生で聴けて幸せでした。
風のショパンもとても素晴らしい。
空を飛んでいるような美しい旋律、ショパンの音ってなんでこんなに心に落ち着くのかしら。
さわやかな風に吹かれて、懐かしく穏やかな時を思い返したくなるようです。
そこに幻想的なパッセージが加わっちゃうから程よく心が騒ぎますね。
いい曲です。素晴らしい演奏。
福間さんは燕尾服に着替えて登場。
これもまた格好いい
まさにピアノの王子様です。
イケメンピアニストと持ち上げてほしくはないけど、本当にイケメンなんですもの。
と思ったのですが
演奏に引き込まれて疲れるどころではありませんでした。
最後は天にも昇るような気持ちになっているところに拍手の嵐で現実に引き戻される感じ。
本当に素晴らしかったです。
そして、福間さんといえば演奏への思いを語ってくれるトークも魅力の一つだと思っています。
今回もアンコールの「主よ人の望みの喜びよ」は
「この公演で天まで上ったので、天の様子を表す曲にしました」と素敵な選曲理由を教えてくれました。
福間さんはパリに留学していて、シャンソンが好きとのことで
尊敬するプーランクとエディト・ピアフの没後50周年ということもあって
この曲、本当に大好きな曲なので福間さんの演奏で聴けてうれしくてたまりませんでした。
ちょっと物憂げでリリックな曲調が大人っぽくてエディットピアフの色気を感じられるんです。
ドラマチックで恋多き女だったピアフの幸せも悲しみも合わせたような素敵な曲なんです。
これを演奏する福間さんもパリに留学したりドイツに行ったり、
きっと喜びも苦しみも多いんだろうけど演奏に昇華してくれてるなって思ってしまいました。
そして、E・サティの「ジュ・トゥ・ヴ」福間さんの編曲で素晴らしい曲に生まれ変わってました!
こんなに格好良くなるんだ!ってうれしい驚きでした。
原曲も十分いい曲なんですよ。
その良さを生かして、福間さんの超絶技巧でたくさん飾りつけをしてもらった「ジュ・トゥ・ヴ」を
聴いたら、もう「Je te veux. あなたが欲しい」の威力がものすごいことになってしまいます。
ハートを奪われてしまいました。
ああ、幸せ
とても幸せな演奏会でした。
やはり音楽は生で聴くと感動が大きくなります。
これからも福間洸太朗さんのファンでいたいです。
福間さん、これからも素晴らしい演奏を聞かせてくださいね。